西都市民に永く愛されてきた、宿泊も可能な天然温泉「さいと温泉」。2022年1月、その施設の中の売店の奥に小さな美容サロン「Bloom」がオープンしました。オーナーは、エステティシャンの井上さん。三人のお子さんを育てる母親でありながら、フリーランスのヘアメイクとしても活動する多彩な才能の持ち主です。
仲間がいるから頑張れる
井上さんは西都市で生まれ育ち、高校卒業後は美容専門学校へ進学。その流れで美容関係の営業職に就いたものの、過酷な労働環境に体調を崩し、やむなく退職することに。宮崎に戻り、憧れていたブライダルの仕事を目指そうと決意します。美容免許を取得すべく、美容室で働きながら通信課程の専門学校に通う多忙な日々のなかで、結婚と出産という大きな変化も訪れました。
「ブライダルでは10年ほど働いたでしょうか。メイクやネイル、着付けの助手や花嫁の方のヘアチェンジなど、いろんなことを経験しました。夢が叶って毎日が楽しく、とても充実していましたね。ただ、土日も家族の時間がないのは子どもたちがかわいそうだという思いもあって、悩んだ末にエステ関係の会社に転職したんです」
美容師の頃からいつかは独立したいと考えていた井上さんは、育児の傍らで起業という新たな挑戦へと乗り出します。友人から「温泉内の売店の奥」という少し珍しい立地の物件を知り、また別の友人から創業支援補助金について教えてもらったこともあり、開業までの道のりは「友達との縁とつながりがあってこそ」と強調します。
「同じ世代や同級生で飲食店をがんばっている子とかもいて、そういう仲間がいることが大きいですね。経営についてもアドバイスをもらったりします。おかげさまで、七五三のお仕度やブライダルの仕事も少しずつ頂いていて、並行してヘアメイクの仕事も行っています。外面、内面、精神面から美を作る『三面美容』を軸としながら、自分のできるサポートを行っていきたいですね」
連携してみんなでまちを盛り上げたい
長く西都市を知る井上さんによると、最近の西都市は若い世代の方や子連れでも楽しめるようなお店が増え、少しずつ活気が出てきているといいます。その一方で「市外から来てくれる人たちが、どこかでランチを食べて、寄り道をせずに帰るという状況があって……良いところがたくさんあるのに、もったいないよねって話していて」とも。こうした課題感を共にしたお店同士が連携し、定期的なイベントをスタートさせました。そのねらいは、個々ではなく、みんなでまち全体を盛り上げていくこと。同日に複数の場所でイベントを開催することでお店をまわってもらえるようにしたり、市内のお店をまとめたマップを作るなど、西都市の魅力をより楽しんでもらえるような仕掛けを考えています。
「イベントは『イザカヤ 楽』さんとか『ライフロング』さんたちと一緒に考えていて、約1ヶ月に1回のペースで企画しています。やっぱり賛同してくれたり、アイデアや知恵をくれる友達がいるからこそやれるものだなって思います。イベントを通じてつながった方もけっこういて、またそこから相乗効果というか、一人ではできないけど、『一緒にやれたらいいね』みたいな話もでてくる。実際、そうした出会いから生まれたことが少しずつ形になってきています」
ママにとっての癒しとなれるように
井上さんが「Bloom」において重要視しているのは、子育て世代にも利用しやすいお店であること。自粛期間中の出産で家から出られなかったときの経験が、今のお店づくりにつながっているそうです。
「あのときは学校も休校で全員がうちにいて、一日中ご飯を作って片付けての繰り返しでした。ストレスは半端じゃなかったですね。それで、誰かのお世話をしている人たちにも癒しは必要なんだなって。『Bloom』がそういう場所になれたらいいですね。子育て世代の心のオアシスというか。心が安定すると家族にもニコニコできるし、そうすると子どもも笑ってくれますから」
Bloomでは、お子様連れでも入れるようベビーベッドを設置したり、施術中はベビーシッターにお子様を預けられるサービス(※要事前問い合わせ)もスタート。お客さんとは「子育てあるある」で盛り上がることも多いのだそうです。「ママが安心してゆっくりできるようになり、西都市が子育てのしやすいまちになれば良いですね」
おすすめのお店は?
「ライフロング」。自分たちのやりたいことを追求しているお店だと思います。